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事業計画を立てる

事業計画を制するものは、開業を制す

事業計画とは、これから始まるあなたの事業を発展させる「航海図」です。夢と希望に胸をふくらませ、世間の荒波の中へとこぎ出していく、あなたの開業の道しるべとなるものです。
この「地図」さえしっかりとしていれば、後はその地図を頼りに力強く進んでいくことができるでしょう。
事業計画こそ、開業がうまくいくかどうかを左右するカギなのです。ですから、まずは人に頼らず、自分自身で書いてみることをお勧めします。

1. 事業計画書とは?

事業計画書とは、あなたがこれから行おうとしている事業の内容や目的、特徴を明らかにするものです。事業計画をしっかりと書くことはどのような良いことがあるのでしょうか?
大きく分けて3つの良いことがあると言えます。

(1)  夢が現実になる第一歩を踏み出せる
事業計画を書くと、あなた自身がずっと考えてきた開業の夢が、現実味を増してきます。開業までのスケジュールや、収支計画などを明らかにすることで、夢は目標となり、そして現実となるのです。

(2)  融資を受けやすくなる
しっかりとした事業計画があれば、金融機関からの融資も受けやすくなります。「なるほど、この計画ならうまくいきそうだ」と融資のプロに言ってもらえるような内容に仕上げることが大切です。

(3)  開業後、迷った時に立ち戻る道しるべに
開業後、思いもよらない方向性に事業が進んで行ったり、大きな経営的な判断を求められる局面が訪れた時に、自分の原点を見つめ直すことができます。

事業計画が大変重要なものであるとご理解いただけましたでしょうか? では、事業計画書にはどのような内容を書けばいいのでしょうか?

2. 事業計画の書き方

融資を目的として事業計画を書く場合、各金融機関の所定のフォーマットが準備されていることも多くあります。最初の段階からいきなり定められたフォーマット通りに書くことはお勧めできません。なぜならば、「本当に自分の考え」を見つめることなく、フォーマットを上手な文章で埋めることばかりを考えてしまいがちだからです。自分自身の考えをまとめるためにも、まずはパソコンのWordやパワーポイント、あるいは手書きでもかまいませんので、あなた自身の言葉で事業計画を書いていきましょう。
しっかりとした事業計画はこう書く!
項目 小項目と書き方のポイント
事業の概要 ■事業内容

「誰を対象に」「どのような商品・サービスを提供するのか」をできるだけ具体的に記入しましょう。メインターゲットとする顧客の年齢や性別、抱えているニーズなどを明確にするのがコツです。


■開業の動機
なぜ、その事業を立ち上げようと思ったのかを記入します。事業にかける熱い気持ちと、客観的な分析(なぜ、それがビジネスとして成り立つと言えるのか)の両面が必要です。

■事業を通じて達成したい目標
事業を通じて、社会にどう貢献することを目標にするのかを言語化します。あわせて初年度~3期目までの売上・経常利益を具体的な数字で掲載できると良いでしょう。年間の受注獲得件数や単価など、各業種に合わせた数字目標を入れましょう。

■自分の経歴
自分の経歴は、融資担当者が見た時に「この人ならば、このビジネスはうまくいくだろう」と思わせるものにしましょう。前職が開業する事業内容と関連している場合は、前職での成果をPR。地域の有力者とのつながりや、所属するコミュニティでの活動などもアピールしましょう。人脈の広さも一つの武器になります。

市場分析

■市場
あなたが参入しようとしている業界の現状を分析します。市場規模はどれぐらいなのか、あなたがターゲットとする商圏で顧客になり得る人数などを明らかにしていきます。

■競合
あなたがこれから戦うのはレッドオーシャンなのか、あるいはニッチなブルーオーシャンなのか。競合他社はどのような戦略を取っており、そこに対してあなたがどう対抗していくのか。どの程度のシェアをねらうのか、を明らかにしていきます。

■将来性
業界全体の未来予想は明るいのか、それともシュリンクしていく市場なのか。なぜそう言えるのかについて述べていきます。

商品・サービス

■商品・サービス
誰をターゲットとし、どのような商品・サービスをどのように提供するのかを述べます。具体的な商品名、サービス内容を記述していきます。

■商品・サービスの強み
他社と比較してあなたの事業は、どう優れているのか。そして、その根拠を記入します。例えば、「他社で3日間かかる修理作業を、弊社では1日で対応できます。なぜならば、他社は修理職人が外注であるため、タイムロスが発生するのですが、弊社では私自身がお客様窓口と修理を担当するため、納期が短縮できます」など。

販売・仕入・生産計画

■販売計画
営業方針を述べる箇所です。販売先はどこが見込めるのか、販売方法は店舗、委託販売、ネット販売など、いずれなのか。商品・サービスの価格については、仕入計画、生産計画に基づいて原価を割り出し、利益を乗せる形で考えてみましょう。

■仕入計画
商品・サービスを生み出すために何がどれ位必要なのか。調達方法、コストになどにうついて記入します。

■生産計画
自社で製造・販売する商品・サービスの場合、月に何個ほど生産できるのか、またそれにかかるコストを洗い出していきます。

事務所設備・従業員

■事務所・設備
店舗や事務所を構える場合の家賃と、必要経費を洗い出します。設備投資は最初から欲張りすぎると経営が苦しくなります。優先順位をつけながら、何年間かの計画を立ててじょじょに充実させていきましょう。

■人員
従業員の予定数を割り出し、人件費や保険料を考えておきます。まずは小さく始めて・・・という場合、家族を従業員扱いにして給与を出すことも可能です。

資金計画

■開業資金と運転資金
まず、立ち上げ時に必要な開業資金と、毎月必要になる運転資金とにわけて考えてみましょう。例えば、事務所を借りるための初期費用(前払い家賃や保証金)、内装費、設備費、開業時の広告宣伝費などが開業資金となります。毎月かかる家賃や水道光熱費、人件費などが運転資金となります。

■資金調達計画
必要な資金(開業資金+運転資金)をどのように調達するかを記入します。
自己資金がいくら、親族や知人からの借り入れがいくら・・・といった具合に記入していきましょう。金融機関に提出する際は、親族からの借り入れは自己資金に組み込みましょう。

3. 事業計画を人に見せ、専門家のアドバイスを受ける

事業計画を書きあげたら、できればその分野に「詳しくない人」に読んでもらいましょう。融資担当者がすべての業種・業態に精通しているとは限りません。誰が読んでもわかりやすい伝わる内容になっているかを、「素人の目」で確認してもらいましょう。
次に専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。「開業コンサルタント」などにお願いしても良いのですが、お勧めは税理士に見てもらうこと。独立開業後は、必ずや決算などで税理士にお世話になることでしょう。開業準備中に、何人かの税理士と会い、事業計画を見てもらえば、税理士の人柄や能力もわかるため、開業後の顧問税理士候補を探すきっかけになります。無料で事業計画のアドバイスが受けられる可能性もあり、一石二鳥!

運転資金は何カ月分必要?

業種・業態によりますが、開業してからしばらくは、「入金がない」日々が続くと覚悟しておきましょう。例えば、BtoBの取引形態の場合、月末締めの翌月末払、業界によっては翌々月末払の場合も・・・。
つまり請求書を送ってから入金まで少なくとも3か月のタイムラグがあると見込んでおきましょう。
運転資金は、最低でも3カ月。できれば、6カ月分準備しておくと安心です。
なお、取引の基本は「“払い”は遅く、“もらい”は早く」。こちらからの支払いはできるだけ遅くして、先方からの支払いはなるべく早く回収するということです。それによって、キャッシュフロー経営に近づくことができるのです。